桑田さんに負けた日。これは決してエロい話ではなく、真面目なまじめな仏教のお話である。
あれはもう何年前の話だろうか。
僕よりも5つ年上の彼女と付き合っていたあの日。僕は1つの真理を得ることになったのです。
あのジャイアンツ黄金時代を支えた18番、エース桑田真澄さんに負けた日
彼女の家は風情がある木造一戸建ての家だった。階段を歩くとキシキシと音がする。二階の部屋を歩くとドンドンと音がするのも、築年数が経った木造家屋の特徴だろう。
彼女はお母さんと2人暮らし。愛犬と愛ネコちゃんが同居していて、彼女の家にいくと少し痒みを感じたのは僕がのちに判明した猫アレルギーだったから。そんなことはどうでもいい。
栃木県宇都宮市に転勤で独り暮らしをしていた僕にとって、彼女の家は時に憩いの場になり、時にラブホテルになった。そりゃ当然だろう。そこに彼女とフリーダムな空間があれば人は裸になる。それでも時折痒かったのは言うまでもない。
あれはこの写真の時。調子に乗っていきがってる横で彼女は髪の毛だけが写っている。
そんなある日。少し歩くとキシキシドンドンと音がなる部屋で、いつものように2人は裸になった。何度も言うが、キシキシドンドンなろうが、そこにカップルとフリーダムな空間、自由な心があれば人は裸になるのだ。
写真のように粋がっていた僕は、「彼女を気持ちよくさせているんだ!」という思想のもとに腰を動かす。誰だって「試合に負けるぞ!」なんていう思いで走らない。「試合に勝つぞ!」そのために高校球児だって灼熱のグラウンドに飛び出していくじゃないか!
僕だって、この試合に勝つ!そんな気持ちで一心不乱に汗を出していたその時、暗がりを解消するためにつけていたテレビに彼女が釘付けになった。その瞬間放たれた彼女の言葉に僕は完全に負けたんだ。
「桑田出てるからちょっと待って!」
くっ、くわた、、、くわたってなんだ?!新しい体位か?クワガタ??なんだ?なんなんだ????!!!!
テレビに目を移すと、そこにはあのジャイアンツの大エース、桑田真澄さんがにこやかに笑ってるじゃないか。しかも試合で投げているわけでもない。ただインタビューに答えてるだけの桑田さんが。
僕は完敗した。当然だろう。僕が桑田さんになんか勝てっこないんだ。僕のバットじゃ桑田さんの鬼のカーブは打てないさ。
さぁ、彼女よ。思いっきり桑田さんの輝くストレートを受け止めてこい。僕はそれを口を開けて眺める応援者だ。
僕は裸のまま彼女を応援した。
あの、完膚なきまでに叩きのめされたあの日。僕は1つの真理を悟ったんだ。
あー、諸行無常。因果応報、色即是空。
形あるものはいつか壊れ、恒常的に続くものなんてないんだ、と。
その完敗は僕が完敗と思えば完敗だし
完勝と思えば完勝だ。
何事も「空」だ。そこに実体なんかない。
ないものに意味付けすることも自分なんだ。
そしてさらに深めると、我思う故に我ありの我すらそこには存在しない。
あの
きしむ木造家屋の上で優しさ持ちより
きつく体 抱きしめ合えば
そこに桑田さんがいたんだ。
あの出来事は、1つの真理と言えよう。
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