世界に記憶を残すために、今日もプワゾンを。
髭剃りをしていたら、あの髭剃りの独特の匂いが鼻をついた。臭いわけではないけど、決して良い匂いでもなく記憶に残るような独特な香り。
中学生になった僕は、父親の髭を剃る姿を見て大人を感じ、たいして生えてもいない自分の髭を隠れてこっそり父親の髭剃りを拝借して剃った記憶がある。
あの時と同じ匂い。
「匂い」なのか「香り」なのかわからないけど、それは日々の一瞬の間に記憶を呼び起こさせます。
フランスの小説家、マルセル・プルーストが自伝的小説の中で、紅茶を浸したマドレーヌを口に運んだ時に過去の記憶が蘇った体験を描いたことから、この匂いによる記憶の呼び覚ましを
プルースト現象
と呼びます。
中学三年生の時、彼女がつけていた香水。
なにをつけていたか忘れた(確かプチサンボンだったかな)けど、今香ったら確実に思い出す。
僕は高校1年生から今まで、25年間ディオールのタンドゥール・プワゾンっていう香水を使っているんだけど、この香りをかいで僕のことを思い出してくれる人がいたら嬉しいなぁなんて思う。
もう、製造していない香水を死ぬまで使いたいって思うのは僕とこの匂いは共存してきたからなんだと思います。
香りは、記憶を蘇らせる。
オンラインでもいつか香りを感じられるようになるのかな?なんて思いながら時代の変化を受け入れていくんだけど、香りに敏感な僕にとってデジタル化された香りは受け容れ難く、人間らしい”思い出の香り”はいつまでも永遠に残って欲しいと自分勝手に思うんです。
別に君を求めてないけど
横にいられると思い出す
君のドルチェアンドガッバーナの
その香水のせいだよ
子供たちが最近毎日歌ってる。君たちもいつか大好きな人の香りに喜怒哀楽するに違いない。
髭剃りの匂い
あの子の香り
独特なゴミの匂い
すれ違い消える香り
雨の匂いや晴れた空気の香り
今日も手首にいつもの香水を吹きかけて
僕を世界に記憶してもらおうとディオールの毒を飲んだんだ。
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